今回、運営メンバー2名で、「メラノサイト含有自家培養表皮」という外科的治療に使う製品を提供するJ-TEC(ジャパン・ティッシュエンジニアリング)を訪問し、社員の皆さまとワークショップや講演会を通じて交流しました。
J-TECは、「再生医療をあたりまえの医療に」を理念に掲げ、患者自身の細胞を用いた再生医療等製品の研究・開発・製造販売を行っています。白斑治療に用いられるメラノサイト含有自家培養表皮もその一つで、患者自身の皮膚から採取した細胞を培養し、再び移植することで色素の再生を目指します。
詳しくは以下のページで紹介されています。 J-TEC企業紹介 / メラノサイト含有自家培養表皮について
当事者のライフストーリーから見えてきたこと
今回のワークショップでは、運営者が作成した「白斑とともに暮らす工夫」をまとめたパターンカードを活用し、社員の皆さまと意見交換を行いました。カードには、白斑当事者が日常生活の中で実践している工夫や考え方がまとめられています。
ワークショップは、まず複数の当事者のライフストーリーを共有するところから始まりました。発症した時期や生活環境、白斑との向き合い方は人それぞれであり、同じ白斑であっても、その経験は一つではありません。
ライフストーリーを読み進める中で、自然と医療者からの言葉や説明についての話題が広がりました。あるライフストーリーの中で紹介された「20歳になったら治るよ」という医師の言葉に対しては、「その言葉は本人にとってどのように受け止められるのだろうか」「励ましとして伝えた言葉でも、受け取る側によって感じ方は大きく異なるのではないか」といった意見が出ました。状況や情報を伝えることはもちろん大切ですが、どのような言葉で伝えるかもまた重要なのだと、改めて考えさせられる場面でした。
「もし自分が白斑だったら」
ワークショップ後半では、「もし自分が白斑だったらどう感じるだろう」というテーマでグループごとに話し合いました。
印象的だったのは、社員の皆さまの反応が決して一様ではなかったことです。「自分だったら隠したいと思う」という人もいれば、「まずは治療や選択肢について調べると思う」という人もいました。同じテーマについて考えていても、想像する行動や感じ方は人によって大きく異なっていました。
「学生時代は特に周囲との違いを意識しやすい時期かもしれない」「学校という限られたコミュニティの中では、感じ方もまた違うのではないか」といった意見も聞かれました。また、「日本には“みんなと同じ”であることを求める空気があるのではないか」という意見もありました。白斑について考えることを通して、より広いテーマへと議論が広がっていきました。
カバーメイクに関する話題にも関心が集まりました。「メイクによって安心して外出できる人もいると知った」「治療だけでなく、生活を支える選択肢はとても重要と気づいた」といった意見が出され、治療と日常生活の両面から白斑について考える時間となりました。
こうした議論の中で、「患者さんにスマートな支援をしたい」という言葉も社員の方から聞かれました。
治療だけではない支援について
ワークショップ後には、運営者による講演会を行いました。講演では、白斑を発症してから現在に至るまでの経験や、その時々で感じていたこと、周囲との関わり方、そして白斑コミュニティの活動を始めた背景についてお話ししました。
質疑応答では、「周囲から言われて嬉しかった言葉はあるか」「治療法についてどのような説明を受けたのか」といった質問が寄せられました。「医師からの説明が不十分だと感じることは課題だと思った」という感想や、「病院の情報にもっとアクセスしやすくなると良いのではないか」という意見もありました。
「治療法を説明する冊子だけでなく、患者の気持ちに寄り添うような冊子が病院にあっても良いのではないか」という声も印象に残っています。社員の皆さまから自然と出てきた「患者さんの声を直接聞く機会はなかなかない」という言葉も、今回の対話の意義を改めて感じさせるものでした。
白斑に対する自家培養表皮移植に関する参考情報
さいごに、白斑の治療のひとつである「メラノサイト含有自家培養表皮の移植」について、対象となる白斑や費用面、実際に治療を受けた結果など、公表されている情報をもとに、分かりやすくQ&A形式でまとめました。治療の選択肢を正しく知るための参考になれば幸いです。
Q. 費用はいくら?保険適用はある?
A. すでに2024年10月1日に「メラノサイト含有自家培養表皮」を用いた治療は保険診療として認められています。ただし、保険診療として提供できる医療機関の条件があるため、主に大学病院等で提供されているようです。
Q. どのような人が治療の対象になる? 進行中の白斑でも治療を受けられる?
A. 「メラノサイト含有自家培養表皮」を用いた保険診療の適応は、「外科的治療が無効又は適応とならない白斑」です。さらに、使用上の注意として「12ヶ月程度症状が固定した尋常性白斑、Vogt-小柳-原田病若しくは化学物質による完全脱色素斑、又はまだら症などの先天性異常による完全脱色素斑に対して本品を使用すること。」とされています。
加えて、保険診療として受けることのできる方の条件として、「非外科的治療が無効又は適応とならない白斑患者のうち、12歳以上の患者に対して使用した場合に限り算定できる。」等の制限があります。それ以外の適応範囲については、患者の白斑の状態やそれぞれの医師の判断によります。
Q. 分節型と非分節型で違いはある?
A. 適応の文言上は分節型・非分節型に関する制限はありません。ただし、メラノサイト含有自家培養表皮を含む外科的な治療は、一般的に分節型でより良好な成績が得られるようです。分節型に比べ非分節型では術後の尋常性白斑の再発率が高く、いかに再発予防するかが課題であると白斑の診療ガイドラインに記載されています。これらを考慮しながら、最終的には医師が判断することになるようです。
Q. 移植後の見た目や仕上がりはどうなりますか?
A. 実際に治療を行っている医師のインタビューやFAQで詳しく触れられていますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考資料:治療について / 医師インタビュー・FAQ / 患者インタビュー
訪問を終えて
今回のワークショップや講演会では、治療法だけでなく、白斑とともに暮らす日常についても多くの対話が生まれました。実際にどのような経験を重ね、どのようなことを感じながら生活しているのかという当事者の視点に触れる機会は決して多くありません。
治療をつくる側と治療を受ける側、それぞれの立場から率直に言葉を交わすことで、新たな気づきが生まれる時間となりました。今回の交流が、白斑について考えるきっかけの一つとなれば嬉しく思います。
最後に、このような貴重な機会をいただいたJ-TECの皆さまに心より感謝申し上げます。
※本記事は編集部による訪問取材や調査をもとに作成しています。治療の詳細・適応・費用については、必ず担当医にご確認ください。