皮膚の色素をつくる細胞(メラノサイト)が免疫の仕組みによって失われ、皮膚の一部が白くなっていく後天性の疾患です。全身のどの部位にも生じる可能性があり、見た目の変化が生活の質(QOL)に大きく影響します。
「白斑(はくはん)」は、皮膚の色が部分的に白く抜けた状態を指す広いことば(総称)です。白く見える原因はいくつかありますが、その中でいちばん代表的な病気が「尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)」。このサイトで単に「白斑」と書いているときは、主にこの尋常性白斑のことを指しています。
出典:尋常性白斑診療ガイドライン第2版 2025(日本皮膚科学会)。本サイトの情報は参考を目的としたもので、医師による診断・治療の代替ではありません。治療については必ず皮膚科専門医にご相談ください。
尋常性白斑は「どこに・どんな広がり方で出るか」によって分類されます。これは見た目を整理するためだけのものではありません。タイプによって進行のしかた・合併症のリスク・選べる治療法が変わるため、自分がどのタイプかを知ることが、治療方針を決める出発点になります。
尋常性白斑は、大きく次の3つに分けられます。それぞれの下に、具体的なあらわれ方(サブタイプ)があります。
最も多いタイプ。体の左右に対称的に出やすく、10〜30歳代に発症しやすい。甲状腺疾患など自己免疫疾患を合併することがあります。
体の片側に帯状に出るタイプ。より若年で発症しやすく、多くは1〜2年で進行が止まります。外科的治療で良好な成績が得られやすいのが特徴です。
限局した1か所の白斑や、粘膜だけの単独病変など、現時点では非分節型・分節型のどちらにも分類しにくいタイプ。経過のなかで分類が定まることもあります。
酸化ストレスなどの環境因子で、皮膚のメラノサイトが傷つき始めます。
傷ついた細胞から抗原が放出され、免疫細胞(樹状細胞・T細胞)が活性化します。
CD8⁺T細胞がメラノサイトを攻撃・破壊し続け、皮膚の色素が失われます。
IFN-γがさらにメラノサイトのアポトーシスや老化を促進し、白斑が広がります。
遺伝的要因と環境要因が重なることで、発症リスクが高まります。
日本皮膚科学会「尋常性白斑診療ガイドライン第2版 2025」で示されている治療法を、はたらき方ごとに整理しました。臨床型(分節型/非分節型)・病勢・部位・ご本人の希望に応じて、医師と相談しながら選んでいきます。
最も広く使われるぬり薬。顔・頸部を除く非分節型でとくに推奨度が高い。長期使用による皮膚萎縮などの副作用に注意し、期間を決めて使います。
顔面など皮膚の薄い部位に適した免疫調整薬。3〜6か月を目安に効果を判定します。(白斑への使用は保険適用外)
日光浴やNB-UVB・エキシマライトなどの光線療法と併用して用いることが考慮されます。(保険適用外)
新しい選択肢として研究が進む外用薬。現時点ではエビデンスが少なく慎重に用います。米国で承認されたルキソリチニブ外用は国内未販売。(保険適用外)
進行期の非分節型・分節型の第一選択。広範囲に使え、急速進行例では内服ステロイドとの併用も。10歳未満には推奨されず、累積照射回数は200回までを目安とします。
外用薬で反応しない、範囲5%以下の限局した病変に。病変部だけを狙って照射します。エキシマレーザーは2019年に保険収載されました。
現在は限定的な使用にとどまり、基本はNB-UVBやエキシマを優先します。
通院が難しい場合の選択肢として海外では普及。ただし現時点では国内に適応となる照射機器がない点に留意が必要です。
進行期の汎発型白斑に対し、白斑の拡大を止める目的で行われることがあります。
進行期に、易感染性などのリスクを検討したうえで行われることがあります。
白斑が1年以上、広がらず落ち着いている方が対象です。健康な部分の皮膚を白斑部へ移して、色をつくる細胞を補う治療で、とくに見た目が気になる部位に行えます。分節型のほうが良い結果が得られやすく、非分節型ではこすれ・傷の刺激で白斑が広がる「ケブネル現象」が起きていない場合に向きます。国内では主に、ミニグラフト法・吸引水疱蓋表皮移植法・スマッシュグラフト法(いずれも皮膚を移す方法の種類)が行われてきました。
自分の皮膚からメラノサイト(色をつくる細胞)を含む表皮を培養し、白くなった部分に移植する手術です。2024年10月から健康保険が使えるようになりました。12歳以上で、白斑が約1年以上落ち着いている方が目安で、主に大学病院などで受けられます。
白斑がからだの広い範囲に及ぶ場合に、色を取り戻すのではなく、逆に残っている正常な色素を抜いて、肌の色を均一な白さにそろえる考え方の治療です。代表的な薬がモノベンゾン(外用)。一度抜いた色素は元に戻せず(不可逆)、紫外線にとても弱くなるため生涯にわたる日焼け対策が必要です。国内では一般的な市販薬がなく、対応できる施設は限られます。受けるかどうかは、医師とよく相談して慎重に決める治療です。
露出部の病変をカバーし、色の差を目立たなくする方法。生活の質(QOL)の改善に寄与します。
それぞれの治療は、はたらき方も期待できる効果も異なります。グローバル治療指針では、臨床型(分節型/非分節型)とその時点の病勢を評価したうえで、共有意思決定(SDM)のもとで「進行を抑える」か「色素の再生をはかる」かの目標を決め、治療法を選ぶことが提唱されています。治療は長期にわたることもあります。最適な治療は、必ず皮膚科専門医にご相談ください。
実際の保険適用の可否・自己負担額は治療内容や医療機関によって異なります。受診先で必ずご確認ください。お住まいの自治体によっては、カモフラージュ(医療用メイク)などのアピアランス(外見)ケアへの助成がある場合もあります。
ガイドラインに基づく複数の治療法があります。ステロイド外用、光線療法(NB-UVB・エキシマ)、タクロリムス軟膏、内服薬など。個人差が大きいため、医師と一緒に最適な治療計画を立てることが大切です。
日本人の患者さんでは11.3%に家系内発症がみられ、遺伝的素因は関係します(Narita et al., 2011)。ただし素因を持つ全員が発症するわけではなく、環境要因やストレスなど複数の要因が複合的に関係して発症します。
いいえ。「尋常性白斑パラドックス」と呼ばれ、メラニンが減少していても皮膚癌リスクは高くありません。光線療法を含む治療でも、悪性黒色腫や皮膚癌のリスク上昇は有意に認められていません。
通常は臨床観察で診断可能です。ウッド灯検査は範囲や重症度の判定に有用。日本人の汎発型(非分節型)の患者さんでは20.3%に自己免疫疾患(特に甲状腺疾患12.0%)の合併が報告されており(Narita et al., 2011)、甲状腺自己抗体とホルモン値のスクリーニングが推奨されます。
デルゴシチニブやルキソリチニブなどのJAK阻害剤が海外で注目されています。ルキソリチニブは米国で承認済み。日本での承認は今後の検討が期待されます。最新の選択肢は医師にご相談ください。
「人にうつる?」「プール・温泉は?」「日焼け止めは?」といった暮らしの中の疑問は、診断されたばかりの方に向けて「はじめての方へ」にまとめています。あわせてご覧ください。
ここでの情報は一般的な目安です。症状や治療の最終的な判断は、必ず主治医(皮膚科)にご相談ください。うつらないこと・甲状腺などの合併・治療の考え方は尋常性白斑診療ガイドライン第2版(2025)に基づいています。